どんな問題が起きましたか

 労働問題の解決のはじめの一歩としては、労働相談です。実際労働問題で悩んでいる方の多くはどこかでまず労働相談しています。

 しかし、解決を目指して労働相談しに来ているのに、結局解決に至らない場合が多くあります。なぜかと考えると、ご自分に合った解決方法を選択しなかった、というのが一番大きな原因なのではないでしょうか。

 解決できるところはいろいろあります、解決できる人もいろいろいます。しかし、どの選択をしても、向き不向き・できることできないこと・一長一短な部分はあって、誰がどのような労働相談されるとしても「ここでこの人に解決してもらえば一番いいですよ」という選択はありません。

 最良の解決方法は、お客様の直面している労働問題がどのようなものなのかにもよりますし、お客様の周辺事情・考え方・性格にもよります。結局のところお客様一人一人によって最良の解決方法は違ってきます。

 あまり考えずにとりあえずどこかに相談に行ってみようというのは、自分に合ったところに行かないと無駄足になるばかりでなく、他のところに行ってまた一から説明するのも大変なので依頼してしまった、強く依頼を勧められ断り切れずに依頼してしまった、言葉巧みに依頼を勧められよくわからないのに依頼してしまったといった事態になる危険性もあります。

 依頼した後で依頼を解除して他に依頼し直すことも不可能ではありませんが、お金・労力・気力が無駄になりますし、時間のロスもあります。問題の類型によっては時効等で権利を失ってしまうものもあります。

 インターネットで「労働問題、残業代請求、セクハラ・パワハラ、解雇」等の言葉に「相談、解決」等の言葉を組み合わせて検索すれば、宣伝広告しているサイトが山のように出てきますが、それぞれのサイトからお客様に合ったところを探すのはなかなか難しいです。なぜならほとんどのサイトは、お客様の労働問題の解決より自分のところに依頼を受けることを重視して作成・記述されているからです。さらに良くないことに依頼を受けるのに都合の悪いことはあまり書いてありません(書いてあっても目立たない)。

 私自身が労働問題で悩み苦しみ、どこに相談にいけばどのように解決してくれるのかよくわからず、あちこちに相談しに行って時間・お金・労力・気力を無駄にしました。同じような思いをする方が一人でも少なくなってほしいです。

 幸いなことに私は自分の望む方向で解決することができましたが、世の中には解決できずに悩んでいる方・困っている方・もう諦めてしまった方・納得いかない解決になってしまった方がたくさんいると思います。そのような方々のために当事務所が少しでもお役に立てたらと思っています。

 当事務所としては、依頼をいただくことよりお客様の労働問題がお客様の納得される形で解決されることが何より大事だと考えていますので、その参考となるように下の表の労働相談1から労働相談9までのページを用意させていただきました。

 「どのような」労働問題を「どこで」「誰で」「どのように」解決していけばよいのか、この四つの点について、お客様ご自身である程度目安を付けられるように、順にできるだけわかりやすく説明してあります。

  • 労働相談1.どんな問題が起きましたか
  • 労働相談2.こんな用語出てきます
  • 労働相談3.「どこで」解決を?
  • 労働相談4.「誰で」解決を?
  • 労働相談5.勝つための基礎知識1
  • 労働相談6.勝つための基礎知識2
  • 労働相談7.勝つための基礎知識3
  • 労働相談8.最良の解決方法は?
  • 労働相談9.相談の予約・当日

 労働相談1から労働相談9のそれぞれのページで、どのようなことを書かせていただいたのか概要を説明させていただきます。

 「1.どんな問題が起きましたか」では、労働相談1から9までのページを作成した趣旨及びその内容の簡単な説明と、お客様が直面するご自分の問題が労働問題なのかその他の問題なのか、労働問題だったらどのような労働問題なのかがわかる手助けとなるようなこと

 「2.こんな用語出てきます」では、お客様が労働問題について自分で調べものをする際や労働相談に行った際に、その中で使われる用語がよくわからなくて困るとか通常社会一般で使われる意味と若干意味が違うようで戸惑うといったことがあまり無いように、よく使われる用語についての簡単な説明

 「3.「どこで」解決を?」では、解決するところ(場面)について、「4.「誰で」解決を?」では、解決する機関・団体・士業について、それぞれ「主な良いと思われる点」「主な良くないと思われる点」を挙げ、どのように良いと思われるのか良くないと思われるのか

 「5.勝つための基礎知識1」では、より望ましい労働問題の解決とは「どのような」解決なのか、個別労働関係紛争を解決する手続においてどのような考え方・しくみによってどのような判断がなされるのか、望ましい解決を得るためにはどのようなことを理解・意識して臨めばよいのか

 「6.勝つための基礎知識2」「7.勝つための基礎知識3」では、個別労働関係紛争を解決する手続において、どのように手続が進行するのか、手続の様々な場面でどのようなことに気を付ければいいのかを中心に、それぞれの手続及び手続外で当事務所ができること、当事務所ができるそれぞれの業務の進め方・内容・費用

 「6.勝つための基礎知識2」では「あっせん・調停」の手続及び「労働相談」「同行・付き添い」「あっせん・調停における代理人」業務

 「7.勝つための基礎知識3」では「労働審判」「通常訴訟」の手続及び「労働審判・通常訴訟における補佐人」業務

 「8.最良の解決方法は?」では、労働相談1から労働相談7までの内容を踏まえて、実際にお客様がご自身にとって最良の解決方法を決めることができるように、様々な解決方法について比較検討するとともに、どの機関・団体・士業に関わらず、おすすめできる相談・依頼先とおすすめできない相談・依頼先のご案内

 「9.相談の予約・当日」では、お問い合わせ・労働相談の予約をいただく際のお問い合わせ・労働相談の予約の方法とよくあるご質問、より実り多い労働相談とするためのポイント

 労働相談1から労働相談9まで順に読み進めていただき、参考になる箇所がありましたら幸いです。

 また、小さな心配事でも問題といえば問題ですが、トラブル的な感じのことではないような問題についての業務、例えばトラブル的なことの予防、何かの手続き届出、セミナー・研修・講演、何か教えてほしいといったような業務については、「できること(労働者向け)」として、こちらからご案内していますのでご覧ください。

 小さく思えるようなちょっとした心配事から大きな悩みまで、労働・社会保険に関する法律・制度、職場・職業人生についての問題で、当事務所がお客様に対してお役に立てることできることはいろいろありますので、心配事お悩みの大小は気になさらずに、とりあえず一度お気軽にお問い合わせいただければと思います。

労働問題かその他の問題か

 お客様の直面している問題が労働問題なのかその他の問題なのかを考えます。

 どう考えても労働問題である場合、労働問題ではないその他の問題である場合はいいとして、判断に迷うような問題も中にはあります。

 例えば問題の起こった場所で労働問題に関するかというと会社・職場の中だけでなく通勤中・出張中(移動中)も当てはまりますし、仕事が終わった後の会社関係者との飲み会・休日に行われた社内イベントなども当てはまる可能性もあります。

 あと、問題の起こった時間的にはどうかというと休憩・休日・休暇・休業・休職中でも当てはまる可能性がありますし、そもそもまだ勤務していない募集時点から退職後まで当てはまってくる場合があります。

 問題の相手方に関してはどうかというと社長上司同僚部下というような社内だけではなく、出向先・取引先・時にはその他の人も当てはまってくる場合があります。

 事例を出してみますので、判断に迷われるようなケースの方はご自分の問題だとどうかなという視点で見て考えていただけたらと思います。

事例:労働問題になるでしょうか

 赤穂商事は社長の浅野さん専務の大石さん部長の片岡さん課長の堀部さん(他平社員です)ら48人で塩の製造販売を行っている会社です。赤穂商事の塩は大変おいしいと全国で評判です。以下の問題の場合は労働問題になるでしょうか。

  1. 部長の片岡さんが塩を会社の車で輸送中に不注意で交通事故を起こして車を壊してしまったところ、社長の浅野さんに車の修理費を全額請求されました。
  2. 専務の大石さんと課長の堀部さんは、もともと仲が良くありませんでしたが、仕事のことに関して言い争っているうちにもみ合いとなり、堀部さんは怪我をしてしまい病院で治療を受けました。
  3. 課長の堀部さんは社長の浅野さんから個人的に借金していましたが、返済が滞ってしまったところ、次月の給料から未返済の借金の分の金額が引かれていました。

 1の場合、労働問題になります。労働者が原因である業務上の損害について、労働者に損害賠償すること自体は違法ではありませんが、その割合はある程度制限されます。関連条文:労基法16条

 2の場合、労働問題になります。ただし、怪我が業務上の理由によると判断されれば労災に該当しますが、この場合ですと「けんか」と判断される可能性もあります。関連条文:労災法7条

 3の場合、労働問題になります。賃金は全額を相殺せず支払わなければいけません。ただし、この場合ですと借金の返済に関する問題は別の問題となります。関連条文:労基法24条1項

 なぜこのようになるかの詳細は他のページでお話させていただきますが、実際のところ、問題によってケースバイケースなところがあるので、少しでも判断に迷う問題でしたらその旨含め一度お問い合わせいただけたらと思います。

紛争性が有るか無いか

 労働問題では、「職場でちょっとした心配事があるのですが…」から「解雇されたのですが…」ぐらいまで程度がいろいろありますが、ここでは程度については紛争性の有無でまず考えます。あと当事者は誰かについて考えます。

紛争性が有る場合

 相手方がいて、相手方のした処分・取扱い・指示命令・言動・行動、給付の内容・有無等に不服がある・納得がいかないという問題です。もう少しわかりやすく言い直すと、相手方に「されたことされなかったことされたことの中身」に不服がある・納得がいかないという感じです。こちら側と相手方が誰か(どこか)によって5つの場合に分けて考えます。

  1. 労働者個人と使用者との問題
  2. 労働者個人と公共機関との問題
  3. 労働者の団体と使用者との問題
  4. 労働者の団体と公共機関との問題
  5. 使用者と公共機関との問題

 1の場合が一番当てはまる方が多いというかほとんどの方はこの場合になるかと思います。こちら側が労働者個人、相手方が会社・団体の場合です。会社・団体で起こった労働問題は類型は様々ですが、ほぼこの1の場合です。なお、この1の場合の労働問題を「個別労働関係紛争」といいます。

 この労働相談1から9まででは、主にこの「個別労働関係紛争」の解決について説明させていただいています。

 2の場合に当てはまるような場合は、例えば何か公共機関に対して届出・申請・請求したが認められなかった・認められたが金額・期間などに不服がある、若しくは何かの給付・権利が失権した・差し止められた・減額された場合等です。2の場合に当てはまる方にはこちらからご案内していますのでご覧ください。

 3の場合はこちら側が労働者の団体であったり、その団体の構成員の場合です。労働問題に対する類型ごとの考え方は1の場合とほぼ同じですが、主に相手方との交渉過程が違ってきます。この3の場合の労働問題は「集団的労使(労働)紛争」といいます。

 4の場合はあまりありませんが、例えば都道府県労働委員会の救済命令などに不服がある場合等です。

 5の場合は2の場合とほぼ同じです。こちらからご案内していますのでご覧ください。

紛争性が無い場合

 今のところ上記のような争ったり争いそうではない労働問題、例えば労働・社会保険に関して、争ったりする事態にならないように注意点を教えてほしい、何かする手続き届出について教えて欲しい・やってほしい、法律・制度について教えてほしい・セミナー・研修・講演してほしい、といった問題はこちらからご案内していますので、ご覧ください。

どのような労働問題か

 労働問題にはいろいろな類型があります。この項目では、ご自分の労働問題がどのような類型に該当するのかと、その類型の労働問題においては、どのようなことを最低限知っておいてほしいかを記述してあります。

 ご自分の労働問題の類型についての知識を得ることによって、インターネット等で調べものをする際に、関連する情報をかなり集めやすくなりますし、労働相談で誰かと相談する際においても、相談がスムーズにわかりやすく進むこととなります。

 各労働問題の類型ごとに、「定義、意味、基準、種類、概要及び問題点等」、「相手方がよく主張及び反論してくることがら」、「受ける不利益の例」、「請求したいもの及び確認したいもの」(主要なもの)という四つの項目を立てて、ごく簡単に説明させていただきます。

 ※「請求したいもの及び確認したいもの」の部分は、「あっせん・調停」「労働審判」「通常訴訟」等の後で説明させていただく労働問題の解決を図る手続において、申し立て及び訴えるときには、決まった厳格な書き方があるのですが、このページではわかりやすい表現で書いてあります。

 また、類型によっては、上記四つの項目を立てずに概括的に書いてあります。

 少し聞いたことの無いような言葉や意味のわかりづらい言葉が出てくるかもしれませんが、次の「2.こんな用語出てきます」でできるだけ説明させていただきますので、そちらを後でご確認ください。

 解決に向けて行動していくと、請求するもの・主張立証するもの・相手方が主張してきそうなもの・相手方の主張に対してどのように対応するか、証拠となるようなもの・説明すべき周辺事情等についても考えることになりますが、ここでまずご自分の労働問題の概要を、だいたいでいいですので、わかっていただければと思います。

 今現在の段階では、ご自分の労働問題がどのような類型に該当するかよくわからないかもしれませんが、関連してそうなところをあちこち読んでみてください。きっと似たような内容の箇所があるのではと思います。また、「よくある労働問題」のページ(※まだ準備中です)で各類型ごとに、詳しく説明させていただきますので、ご自分の該当しそうな類型のページもご覧ください。

 目次は下の表となります。

  • ○○性が有るか無いか
  • 「ハラスメント」に関する問題
  • 労働契約の終了
  • 労働条件の引き下げ
  • 賃金
  • 懲戒処分
  • 病気・怪我
  • 労働者としての地位の変更
  • 募集・採用
  • 非正規雇用
  • 育児・介護
  • 障害者・高齢者の雇用
  • 差別
  • 「休み」に関する問題
  • 義務違反
  • 集団的労働関係
  • その他の労働問題

○○性が有るか無いか

 この項目では、労働者性、使用者性、労働時間性、労働性(労務性)が有るか無いかについて、説明させていただきます。

 労働問題の解決を図るにあたり何らかの手続を利用・活用する場合において、まず労働者性、使用者性、労働時間性、労働性が有るか無いかの判断が必要となることが多いです。

労働者性が有るか無いか

「定義、意味、基準、種類、概要及び問題点等」

 働いている人はみな「労働者」でしょうか。

 一般社会的には、そのような解釈でもよいかもしれませんが、法律上では、働いている人みなは「労働者」に該当しません。

 法律上での話だと、労基法上では「事業に使用される者で、賃金を支払われる者」、労組法上では「賃金、給料その他これに準ずる収入によって生活する者」、労契法上では「使用者に使用されて労働し、賃金を支払われる者」が「労働者」です。労基法と労契法ではほぼ同じ意味ですが、労組法ではもう少し広い概念となっています(現に使用されていなくてもいい、賃金は労働の対償とまでされていない等)。

 また、その法律で(その法律のある条文で)「適用除外」と規定されている条件に該当すると、その法律が(その法律のある条文が)適用されないという仕組みもあります。

 それぞれの法律に関して何らかの争いがある時は、当事者がその法律で定められている「労働者」に当たるかどうかがまず考えられますし、そもそも「労働者」であるのかどうかが争いになることもあります。

 個別労働関係紛争における「労働者」は、原則として「使用者の指揮監督下において労務の提供をし、労務に対する対償を支払われる者」と理解しておいていただけるとよいです。

「相手方がよく主張及び反論してくることがら」

・「労働者」と「使用者」としての「労働」契約ではなく、「請負人」と「注文者」としての「請負」契約であった。

・その時点においてはまだ労働契約を締結しておらず、「労働者」ではなかった。

「受ける不利益の例」

 その人がその法律で定められている「労働者」に該当しないと、その法律で定められている労働者としての、権利が行使できなかったり、保護が受けられなかったりする。

 例えば、その人が労働基準法上の「労働者」に該当しないのであれば、労働基準法に定められている様々な権利や保護の規定は、その人には原則として適用されない。

「請求したいもの及び確認したいもの」

 労働者としての地位が有ること

使用者性が有るか無いか

「定義、意味、基準、種類、概要及び問題点等」

 あなたの働いている会社の社長は、あなたにとって「使用者」でしょうか。

 一般社会的には、上記の設定だと「使用者」という解釈でよいと思われるのでしょうが、法律上では、必ずしも「使用者」に該当するとは限りません。また、あなたの働いている会社の社長以外に「使用者」に該当する人・会社がある可能性もあります。

 法律上での話だと、労基法及び労契法上では「その使用する労働者に対して賃金を支払う者」が「使用者」です。労組法上では労基法及び労契法上の概念に加えて「近い過去において使用者だった者もしくは近い未来において使用者となる可能性がある者」についても使用者性が認められることがあります。

 「使用者」性が問題となるような場合の例としては、親会社が子会社の運営を実質的に支配している場合において、実質形骸化している子会社の雇用する労働者に対して「使用者」としての責任を逃れたりするケースが挙げられます。また、子会社を解散・譲渡等して労働者を排除したりといった形で「使用者」としての責任を逃れるといったケースもあります。

 その他、請負会社の従業員が注文者の注文先(注文者の会社)で働いている場合に、注文者の会社の従業員が請負会社の従業員に直接指揮命令をしていたり、注文者の会社が実質的に賃金決定を行い、注文者の会社が請負会社を通じて賃金を払っているといったケースもあります(「偽装請負」と呼ばれます)。

 また、労働基準法では、罰則や行政監督の規定がありまして、その対象となる「使用者」は、「事業主」または「その事業の労働者に関する事項について、事業主のために行為をするすべての者」と定められています。

 したがって、その事件の態様によっては、代表取締役以外の取締役や独立した事業場の工場長、支店長、営業所長が「使用者」となる場合もあります。

「相手方がよく主張及び反論してくることがら」

・親会社は「使用者」ではなかった。

・あることがらについて、営業店の店長は(労基法上の)「使用者」でなかった。

「受ける不利益の例」

 誰を相手方として申し立て及び訴えをすればよいのかわからない。

 相手方として申し立て及び訴えをしたい者に、「使用者」性が認められないこともある。

「請求したいもの及び確認したいもの」

 使用者としての地位が有ること

労働時間性が有るか無いか

「定義、意味、基準、種類、概要及び問題点等」

 働いている時間はみな「労働時間」でしょうか。

 「労働者性が有るか無いか」の項目でも同様の問いかけをしましたが、労働者性のお話と同様に、法律上では、働いている時間みなは「労働時間」に該当しません。

 労基法上では「労働者が使用者の指揮命令の下に置かれている時間」とされています。個別労働関係紛争における「労働時間」も労基法上の労働時間と同様と理解しておいていただけるとよいです。

 また、労基法上では原則として実労働時間を労働時間として算定しますが、みなし労働時間制が適用される労働者については、「所定労働時間または通常必要な時間労働したものとみなす」という制度があったりもします。

「相手方がよく主張及び反論してくることがら」

・ある地点からある地点までの移動時間(例えば、事業場から帰宅途中に客先に寄って書類を置いてきた。書類を置いてきただけで数分も滞在すること無くその後直帰した場合の事業場から客先までの移動時間)について、「労働時間」ではなかった。

・所定労働時間外に行われた仕事に関連があるできごと(例えば、始業前の着替え時間、休日に行われる勉強会)について、「労働時間」ではなかった。

「受ける不利益の例」

 これも労働者性の話と同様に、その時間が労働基準法上の「労働時間」に該当しないのであれば、労働基準法に定められている様々な権利や保護の規定は、その時間には原則として適用されない。

「請求したいもの及び確認したいもの」

 労働時間で有ること

労働性(労務性)が有るか無いか

「定義、意味、基準、種類、概要及び問題点等」

 働いたら「労働」したことになるのでしょうか。

 「労働者性が有るか無いか」「労働時間性が有るか無いか」の項目でも同様の問いかけをしましたが、同様に、法律上では、働いたからといって必ずしも「労働」に該当するわけではありません。

 民法上では、労働義務を「債務の本旨に従って」履行しなければならないとされています。

 「債務の本旨に従って」とはどういうことか簡単に言うと、「(会社等から任された仕事を、)「誠実」に「専念」して(行わなければならない)」ということです。

 病気・けが・加齢による体力の衰え等により、従前の職務を十全に果たせなくなった場合に、「債務の本旨にしたがった」履行ができなくなったのかどうかが問題になることもあります。

「相手方がよく主張及び反論してくることがら」

・業務時間中にネットサーフィンや私的メール、LINE等の送受信をしていたので、「労働」していなかった。

・昼間の業務時間が終了してから、夜間に長時間の副業をしており、昼間の業務に支障が出ていた(「債務の本旨に従った」履行がされていなかった)。

「受ける不利益の例」

 「債務の本旨に従った」労務の提供ではない(「労働」ではない)と判断されると、その労務の提供に基づく賃金の支払いは受けられない。

「請求したいもの及び確認したいもの」

 労務の提供(労働)で有ること

「ハラスメント」に関する問題

 この項目では、セクハラ、パワハラ、マタハラ、いじめについて、説明させていただきます。

 その他の労働問題の類型ではあまりありませんが、セクハラ、パワハラ、マタハラ及びいじめについての労働問題では、手続において、使用者だけではなく、行為者に対しても相手方として何らかの請求をすることが多いです。

 セクハラ、パワハラ、マタハラ、いじめの行為の結果として、被害者が自殺してしまうという場合があります。その場合は労働災害に該当するかどうかという問題も出てきます。

 被害者が精神的な損害を被っていたり後述の様々な要因があったりすることにより、積極的に解決に向けた行動を取れないことが多いので、家族・友人等のサポートが必要な場合が多いです。

セクハラ

「定義、意味、基準、種類、概要及び問題点等」

 セクシュアル・ハラスメントは、一般的に「相手方の望まない(意に反する)性的な言動」と定義されていて、セクハラとはセクシュアル・ハラスメントの略語です。

 法律的には、均等法で「職場において、労働者の意に反する性的な言動が行われ、それを拒否するなどの対応により解雇、降格、減給などの不利益を受けること」または「性的な言動が行われることで職場の環境が不快なものとなったため、労働者の能力の発揮に悪影響が生じること」とされています。

 また、均等法では「事業主は、職場において行われる性的な言動に対するその雇用する労働者の対応により当該労働者がその労働条件につき不利益を受け、又は当該性的な言動により当該労働者の就業環境が害されることのないよう、当該労働者からの相談に応じ、適切に対応するための必要な体制の整備その他の雇用管理上必要な措置を講じなければならない」と定められています。

 男性から女性への言動だけでなく、女性から男性、同性間、性的マイノリティ(いわゆるLGBT等)に対する言動も対象となります。

 事件の程度によっては、民事における請求だけではなく、刑事告訴を検討する場合もあります。

 被害者が被害を受けたことを他人に伝えることを控えることが多く、相手方と直接交渉することも当然に困難であるため、被害者が解決に向けた行動を取れないことが多いです。

「相手方がよく主張及び反論してくることがら」

・「セクハラ」に該当する行為は無かった。

・「セクハラ」に該当する行為について、社会的に不相当な程度ではなかった(違法となる程度ではなかった)。

 不相当な程度については、その行為の態様、行為者である者の職務上の地位及び年齢、被害者の地位及び年齢、婚姻歴の有無、両者のそれまでの関係、当該言動の行われた場所・時刻、勤務中の行為か否か、相手方に与えた不快感の程度、その言動の反復・継続性、被害者の対応、また接触行為であれば、接触行為の対象となった相手方の身体の部位、接触行為の目的、等を総合的に見て判断されます。

 年齢や婚姻歴の有無が、社会的に不相当な程度を推し量る上でどれくらい重要なのか個人的には疑義もありますが、いろいろなことがらを総合的に見て判断されるということをご理解いただいておけばいいです。

「受ける不利益の例」

 精神的な損害がとても大きく、仕事は当然として仕事以外の私生活にも大きな影響がある。

 会社内にしろ、会社外にしろ、速やかに第三者に助力を求めないと、行為が継続及びエスカレートする可能性が高い。

 相談担当者によっては、二次被害を受けることもある。

「請求したいもの及び確認したいもの」

 損害についての慰謝料

パワハラ

「定義、意味、基準、種類、概要及び問題点等」

 パワハラとはパワー・ハラスメントの略称です。

 法律的には条文上の規定はありませんが、厚生労働省では「同じ職場で働く者に対して、職務上の地位や人間関係などの職場内の優位性を背景に、業務の適正な範囲を超えて、精神的・身体的苦痛を与える又は職場環境を悪化させる行為」と定義されています。

 また、厚生労働省では類型として下の表の六つを挙げています。

  1. 身体的な攻撃(暴行・傷害)
  2. 精神的な攻撃(脅迫・暴言等)
  3. 人間関係からの切り離し(隔離・仲間外し・無視)
  4. 過大な要求(業務上明らかに不要なことや遂行不可能なことの強制、仕事の妨害)
  5. 過小な要求(業務上の合理性なく、能力や経験とかけ離れた程度の低い仕事を命じることや仕事を与えないこと)
  6. 個の侵害(私的なことに過度に立ち入ること)

 上司から部下への言動だけでなく、先輩から後輩、部下から上司、同僚間、正規社員と非正規社員に対する言動等も対象となります。

 上記のような個別の具体的行為のほかに、組織としてなされた配置転換や退職強要等も使用者の行為としてパワハラに該当する場合もあります。

 事件の程度によっては、民事における請求だけではなく、刑事告訴を検討する場合もあります。

 セクハラ・マタハラと違い、相談窓口の設置が事業主に義務付けられていません。

 行為者や会社に対して、抗議をしたり拒否することによって、何らかの降格や降級、もしくは昇格・昇級できないといった不利益を被るといった不安や恐怖心によって、被害者が解決に向けた行動を取れないことが多いです。

「相手方がよく主張及び反論してくることがら」

・「パワハラ」に該当する行為は無かった。(業務の適正な範囲を超えていなかった)。

 セクハラと比べると、行為そのものが「パワハラ」に該当するかどうか「業務の適正な範囲」という曖昧な範囲で判断されるという難しさがある。

・「パワハラ」に該当する行為について、「業務の適正な範囲」をどれくらい超えているのか(違法性があるのか)。

 「業務の適正な範囲」については明確な定義といえるものはありませんが、違法性の判断基準として、裁判例においては「質的にも量的にも一定の違法性を具備していることが必要である。したがって、パワーハラスメントをした者とされた者の人間関係、当該行為の動機・目的・時間・場所、態様等を考慮の上、『企業組織もしくは職務上の指揮命令関係にある上司等が、職務を遂行する過程において、部下に対して、職務上の地位・権限を逸脱・濫用し、社会通念に照らし客観的な見地からみて、通常人が許容しうる範囲を著しく超えるような有形・無形の圧力を加える行為』をしたと評価される場合に限」るとされています。

「受ける不利益の例」

 精神的な損害がとても大きく、仕事は当然として仕事以外の私生活にも大きな影響がある。

 会社内にしろ、会社外にしろ、速やかに第三者に助力を求めないと、行為が継続及びエスカレートする可能性が高い。

 相談担当者によっては、二次被害を受けることもある。

「請求したいもの及び確認したいもの」

 損害についての慰謝料

マタハラ

「定義、意味、基準、種類、概要及び問題点等」

 マタハラとはマタニティ・ハラスメントの略称です。

 法律的には条文上の規定はありませんが、労基法、均等法及び育介法の趣旨等から「労働者が妊娠・出産・育児等に関連して職場で嫌がらせ行為を受けたり、妊娠・出産・育児等を理由として事業主から不利益を被る等の不当な扱いを受けること」と考えられています。

 例えば、均等法では、下の表に挙げたことは禁止されています。

  1. 女性労働者が婚姻、妊娠、出産した場合には退職する旨をあらかじめ定めること
  2. 婚姻を理由に女性労働者を解雇すること
  3. 厚生労働省令で定められている事由を理由に、女性労働者に対して不利益な取扱いをすること

 上記表3の「厚生労働省令で定められている事由」とは、以下の表の事由です。

  1. 妊娠したこと。
  2. 出産したこと。
  3. 母性健康管理措置を求め、又は受けたこと。
  4. 坑内業務・危険有害業務に就けないこと、これらの業務に就かないことの申出をしたこと、又はこれらの業務に就かなかったこと。
  5. 産前休業を請求したこと又は産前休業したこと、産後に就業できないこと、又は産後休業したこと。
  6. 軽易業務への転換を請求し、又は転換したこと。
  7. 時間外等に就業しないことを請求し、又は時間外等に就業しなかったこと。
  8. 育児時間の請求をし、又は取得したこと。
  9. 妊娠又は出産に起因する症状により労働できないこと、労働できなかったこと、又は取得したこと。

 また、事業主は均等法及び育介法に基づき、妊娠・出産、育児休業、介護休業等に関する上司・同僚からの職場でのハラスメント(言動により就業環境を害すること)がないように、防止措置を講じなければなりません。

 セクハラと同様に、男性から女性への言動だけでなく、女性から男性、同性間に対する言動も対象となります。

 セクハラ・パワハラと比べると非常に少ないですが、事件の程度によっては、民事における請求だけではなく、刑事告訴を検討する場合もあります。

 被害者が、「妊娠・出産・育児等によって、同僚・上司・職場・会社に迷惑をかけている」と思い込んでしまっている場合が多く、解決に向けた行動を取れないことが多いです。

「相手方がよく主張及び反論してくることがら」

・「マタハラ」に該当する行為は無かった。

・「マタハラ」に該当する行為について、社会的に不相当な程度ではなかった(違法となる程度ではなかった)。

「受ける不利益の例」

 精神的な損害がとても大きく、仕事は当然として仕事以外の私生活にも大きな影響がある。

 会社内にしろ、会社外にしろ、速やかに第三者に助力を求めないと、行為が継続及びエスカレートする可能性が高い。

 相談担当者によっては、二次被害を受けることもある。

「請求したいもの及び確認したいもの」

 損害についての慰謝料

いじめ

 職場におけるいじめについては、行為の態様等パワハラに類似している部分が多いです。

 ただし、例えば「職務上の地位や人間関係などの職場内の優位性を背景に」というパワハラの概念の範囲から外れていても、またその他のパワハラの概念や類型から外れていても、職場におけるいじめや嫌がらせ等の行為といえるような行為もあります。

 また、違法性を帯びるというところまでいかない程度で陰湿に継続することが多く、法的な解決を図ることは難しい場合もあります。

 そのような場合は、社内での話し合いによる解決(できれば第三者を交えた話し合いによる解決)を図るといった選択以外に有効な手立てがあまりありません。

 しかし、いじめ行為によって、明確に権利・利益が侵害されている、いじめ行為の態様が社会的に許容される程度を超えて違法という評価を行えるほど重大・悪質であるといった場合には、法的な解決を図ることを選択肢として考慮すべきでしょう。

 職場におけるいじめは、パワハラよりもやや広い概念の範囲の就業環境を悪化させる行為又は程度としてパワハラとまではいえないけれども就業環境を悪化させる行為といえます。

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次はこちらから:労働問題に関する用語の説明