誰で解決を?

 労働問題について、相談・依頼を受け付けている機関・団体・士業を下の表にあげてみました。

 労働問題について、相談を受け付けているところが他に全く無いわけではありませんが、ある程度効果がありそうに思われていそうな機関・団体・士業を8つ挙げてみました。

 それぞれの機関・団体・士業について「主な良いと思われる点」「主な良くないと思われる点」「主に「○○で解決」が向いている方」を記述したので、「誰で」解決をするのかを決める参考にしていただきたいです。

  • 自分
  • 総合労働相談コーナー(労働基準監督署)
  • 総合労働相談コーナー(労働基準監督署)以外の公共機関
  • 外部労働組合
  • 行政書士
  • 司法書士
  • 社労士
  • 弁護士
  • このページの内容につきましては、私が今までに見聞きしたことを基に記述しています。全国的に何らかの統計的な調査・聞き取り調査・裏付け調査等を行ったわけではありませんので、全国すべての機関・団体・士業等がこの内容どおりということではありません。あてはまらない場合ももちろんありますので、あくまで参考にする程度で願います。詳細については各機関・団体・士業事務所までお問い合わせください。
  • お客様に自信を持って勧めることができませんので、私の知る限りにおいて、グレーゾーンとなっている・見解に争いがある・裁判所に黙認されているといった権限等については、原則「できない」としました。疑義のある方は各団体・監督官庁・士業団体までお問い合わせください。

自分で解決

主な良いと思われる点

  1. 費用の負担が少ないです
  2. 自分の思った通りに言いたいことを言えます
  3. 早く解決する場合も稀にあります

1.士業に依頼しますと、額の多少はありますが、少なからず費用(着手金・日当・報酬金等)が発生します。自分で行えばこれらの費用は不要となります。士業が行えることは、ほぼ自分でもできます。

2.誰かに指図されるわけではありませんので、自分の思った通り主張できます。

3.使用者が、労働に関する諸法令・制度に理解がある、単なる事務処理のミス・勘違い・思い違いだった等の場合はその場で話がすんなりまとまる場合も、稀ですがあります。

主な良くないと思われる点

  1. 労多くして益少なしとなる場合が多いです
  2. 平日の日中に行動できる時間が必要です

1.会社との直接交渉をされる場合は、個人差はあると思いますが、予想されるより精神的・時間的に負担が大きいと思われます。交渉を長引かせている間に士業と接触して対策をじっくり練っている場合も多いです。

 会社との直接交渉で話がまとまらなかったが、その後その他の解決方法をとられる場合は、時効に注意が必要です。どのような解決方法を選ばれるにせよ、お早めに動かれるといいです。今までの自分の交渉過程・経過時間によっては、交渉中からすでに時効が進行してしまっている場合もあります。

 ADR及び裁判所での手続(あっせん・調停・労働審判・通常訴訟等)を選択される場合は、主に二点の注意が必要です。

 一つ目は主張立証についてです。自分の請求したいことを認めてもらうためには、必要なことを自分で主張立証しなければいけません。また、相手の主張立証に対してはその主張立証が認められないように、自分で反論等して主張立証しなければいけません。特に通常訴訟では当事者が主張していないことは、気づいていたとしても、職権で取り上げて判断することができません。

 さらに、自分にとって不利となるような主張立証をしてしまうと、相手が有利になってしまう危険性もあります。

 主張立証については、その適切さで得られる結果がかなり変わってきます。士業に依頼した際に得られそうな結果からかなりかけ離れた結果になってしまうことも多いです。

 二つ目は事務的なことです。提出する書類・証拠について、書類は書き方及び内容のまとめ方、証拠は揃え方、整理分類及び提出方法について、ルールがあります。特に裁判所における手続では厳格なルールがあります。

 また、書類・証拠は、その適切さの如何によって、主張立証が認められるかどうか、得られる結果が大きく変わってきます。

 あっせん・調停・労働審判・通常訴訟については、「5.勝つための基礎知識1」「6.勝つための基礎知識2」「7.勝つための基礎知識3」のページで、それぞれの手続において、どのような考え方・しくみによってどのような判断がなされるのか、望ましい解決を得るためにはどのようなことを理解・意識して臨めばよいのか、どのように手続が進行するのか、手続の様々な場面でどのようなことに気を付ければいいのかを説明させていただきますので、そちらもご覧ください。

 提出する書類・証拠については、分量としては予想されるよりかなり多いと思われます。作成・整理するだけでもかなり時間がかかります。

2.会社との直接交渉及びその他の解決方法をとられる場合、どのような場面でも平日の日中しかできないことが多いです。また、必要な知識を書籍やインターネットで得ようとすると、かなり膨大な時間・労力・気力が必要です。

主に「自分で解決」が向いている方

他人に任せるより自己責任で解決したい方、できるだけ少額の費用で解決したい方、時間の余裕がある方

総合労働相談コーナー(労働基準監督署)で解決

主な良いと思われる点

  1. 無料です
  2. 予約不要です
  3. 会社・使用者を指導してくれることもあります
  4. 女性相談員がいる場合が多いです
  5. 労働分野について、ある程度は知識・経験・能力が担保されています

1.金銭の負担はありません。

2.待ち時間がある場合はあります。

3.労働諸法令違反について指導してくれる場合はありますが、必ずいついつまでに指導してくれるというわけではありません

4.厚生労働省のHPに各地の総合労働相談コーナーの案内がありまして、設置されている場所ごとに女性相談員の有無が記載されています

5.国の労働相談の玄関口ですので、職員もそれなりの質が期待できます。行政協力という形で社労士が担当している場合もあります

主な良くないと思われる点

  1. 救済してもらうことはできません
  2. 法違反の処罰は期待できません
  3. すぐには行動してくれないことが多いです
  4. 平日の日中に行動できる時間が必要です
  5. 相談時間が限られる場合が多いです

1.解雇無効にしてもらったりパワハラの慰謝料を取ってきてくれたり等の救済をしてもらうことはできません。

 労働基準法・労働安全衛生法等違反といった罰則のある労働関係法律の違反が明らかな事件だと、労働基準監督署から使用者に指導・是正勧告してくれることは期待できます。ただし、指導・是正勧告に強制力はありません。違反が疑われるかもくらいだと動いてくれない場合もあります。

 また、罰則のある労働関係の法律についてではない事件、例えば、解雇が妥当かどうか・ハラスメントに当たるか・配置転換が妥当か・人事考課が公正か・正規社員と非正規社員の待遇の差は妥当かといった事件に関しては管轄外です。

 そもそも労働基準監督署は労働者の権利を守るためにあるのではなく、使用者に労働基準法労働安全衛生法等罰則のある一部の労働関係法律を守らせるためにあります。

 さらに、労働基準監督署は国の機関ですので「民事不介入」です。その点に関しては警察署と一緒です。例えば、詐欺の被害にあったら捜査してくれることは警察署に期待できますが、詐欺によってだまし取られた金銭を取り返してはくれないのと同じです。

 労働基準監督署の場合だと、例えば、給料の未払いがあるという事件だと、給料の未払いがあるかないかについては何らかの監督・指導は期待できますが、未払いとなっている給料を強制的に使用者に支払わせたりといったことはできません。期待できるのは、「払っておいてね」と強制力の無い指導・是正勧告がされるということです。「刑事」と「民事」の違いが大事なところです。

2.悪質な労働基準法・労働安全衛生法違反でも、逮捕・起訴・多額の罰金・懲役といったことは期待できません。

 先日あった電通過労自殺事件、違法な長時間労働の結果として労働者が過労で自殺してしまった事件です。この事件について考えてみると、直近に労基署の指導が複数回入っているにもかかわらず何ら対策を講じなかっただけでなく、そもそも電通では1991年にも労働者が過労自殺しています。

 労基法違反で起訴され簡易裁判所で審理されましたが、判決は「会社に罰金50万円」(長時間労働にかかる法律において罰則の上限は6か月以下の懲役または30万円以下の罰金、このケースでは4人分だったので、罰金の上限は120万円:労基法32条、119条1)だけで、社長・上司はお咎めなしです。

 この事件のケースでやっと「会社に罰金50万円」です。ほとんどの事件では起訴すらされていません。

 「会社を懲らしめてやりたい!罰してやりたい!」というようなお気持ちがある方は多いですが、現実問題として労基署に処罰を期待して駆け込んでも、徒労に終わることがほとんどだと認識してもらっていいです。

3.悪質な法違反が明らかな場合はそうでもありませんが、すぐに動いてくれることは期待できません。なぜなら動く人員が足りないからです。

 警察署に行けば警察官はたくさんいますが(事務職員等もいます)、労働基準監督署に行っても労働基準監督官(労働関係法律違反に関しては警察官と同様な権限がある)は数人で、ほとんどの人は事務職員等です。事件の数、調査にかかる時間に対して全く人数が足りていません。

4.受付時間は平日日中のみです。場所は主に労働局、労基署内です。

5.厳密に制限時間が定められているわけではありませんが、無料で多くの方に利用される公共サービスですので、長時間は難しいです。

主に「総合労働相談コーナー(労働基準監督署)で解決」が向いている方

無料でまず情報を集めたい方、使用者に一部の法違反についての指導を望む方、女性に相談したい方

総合労働相談コーナー(労働基準監督署)以外の公共機関で解決

主な良いと思われる点

  1. 無料です
  2. 予約不要がほとんどです
  3. その機関がほぼ限定的に扱っている事柄については詳しいです

1.金銭の負担はありません。

2.待ち時間がある場合はあります。

3.労働問題の中で、雇用保険・年金に関する争点があった場合などは、それぞれハローワーク・年金事務所に行けばその部分だけの限定的な内容になりますが、専門的な回答が得られることは期待できます。

主な良くないと思われる点

  1. 労働関係法令に関する回答は期待できません
  2. 平日の日中に行動できる時間が必要です
  3. 相談時間が限られる場合が多いです

1.管轄外です。

2.受付時間は原則平日日中のみです。土日夜間に時間が設けられている場合もあります。年金事務所は予約できます。ハローワークは予約できる場合もあります。

3.厳密に制限時間が定められているわけではありませんが、無料で多くの方に利用される公共サービスですので、長時間は難しいです。

主に「総合労働相談コーナー(労働基準監督署)以外の公共機関で解決」が向いている方

労働保険・社会保険に関する争点のある方で、その部分だけ情報のほしい方

外部労働組合で解決

主な良いと思われる点

  1. 多人数で行動できます
  2. 労働関係調整法に定める斡旋(あっせん)・調停・仲裁の範囲内で相談・交渉・和解できます

1.労働組合には憲法で保障された「団結権」「団体行動権」「団体交渉権」があります。一人で動かなくてもいいです。

2.斡旋(あっせん)については、個人の労働問題を集団的労使関係紛争として取り扱うという点以外は他のADRとほぼ同様ですが、当事者(申し立てる側)はあなたではなく外部労働組合となります。調停・仲裁については、原則双方申請であり(相手方も申し立てる必要がある)、個人の労働問題を集団的労使関係紛争として取り扱うのには向いていません。

主な良くないと思われる点

  1. 組合員の方の知識・経験・能力等は担保されていません
  2. 団体交渉にこだわり迅速な解決が図れない場合があります
  3. 希望する手法通りにことを進めてくれない場合もあります
  4. 使用者だけでなく、(元)上司・同僚・部下等との人間関係に問題が出る場合があります
  5. 金銭負担について明示されていないことがあります
  6. したくなくても組合の活動をする必要が出てくる場合があります
  7. 公正さが担保されているとはいえません
  8. 相手方に弁護士がつく場合が多いです

1.労働組合員になるのに何らかの資格についての合格・研修は必要ありません。加入すれば労働組合員です。入会するために試験・研修が必要ということは聞いたことがありません。

2.団体交渉について、交渉の回数・期間等に制限はありませんので、何度でも交渉できます。しかし何度交渉しても和解に至らなければ、ただただ時間が過ぎるばかりになってしまいます。

3.労働問題の当事者といえども一組合員に過ぎませんので、主導権はありません。労働組合には労働組合の意思決定機関があり、そこで決定された意思により組合員が活動します。最低限希望ぐらいは聞いてもらえるとは思いますが。

 また、全部の労働組合がそうとは言えませんが、委員長(トップの人)のワンマンであったり内部で分裂していたりして、組織として公正で統制のとれた形となっていない場合もあります。そのような情報は外部からなかなか入手する術はありませんが、SNSやインターネットの掲示板などからうかがえるかもしれません。

4.労働組合には「争議行為」をすることが認められています。本来では法違反になり得るようなことでも、労働組合が行えば法違反にならない行為です。具体的にはストライキがよく知られている方法でしょうか。ただし、外部労働組合については、あなたの会社に在籍しているのは通常あなただけの場合がほとんどと思われますので、ストライキは効果がありません。

 現在よく行われているのは、主に二つの方法を使った宣伝広報でしょうか。一つ目の方法としては、SNSを主に使った「インターネットでの宣伝広報」があげられます。「○○という会社は違法解雇をしている!○○労働組合は断固戦う!」というような内容のことを多数のアカウントを使って拡散していたりします。ブログやHPなどでも同様な内容を発信していたりします。当事者の方が、目立つように実名・顔写真入りで掲載されている場合があります。

 二つ目の方法としては、「街宣」です。街宣車に乗ってマイクや拡声器を使って叫ぶ等の方法ですね。大きなターミナル駅であったり会社前や会社の最寄り駅や通勤経路で演説したり声を合わせて叫んだりビラを渡したり横断幕をかかげたり等していたりします。当事者の方が、目立つように先頭に立ちひな壇に乗って行われている場合があります。取材・報道される場合もあります。

 実名が出ますと今後の人生においては、何らかの不利益を被ることがあるかもしれません。労働関係についてですと、主に就職時にありえるでしょうか。

 会社が採用をする際に応募者の名前をインターネットで検索する程度のことは、ほとんどの会社でしているのではないかと思います。

 会社には「採用の自由」があります。誰を採用するのかは会社の裁量権の範囲内ですし、採用不採用の理由を開示する義務もありません。なお労働組合員であることを理由とする採用拒否については、最高裁で法違反では無いという判断がされています。

 特に宣伝広報については、あなたの労働問題解決のためだけではなく、労働組合としての活動のアピールの場としても効果が高いと思われますので、よりあなたの主導権は無い可能性があります。

 また、このような宣伝広報の結果として予想されることとしては、使用者だけでなくその会社に勤めている方その家族の方々の居心地が悪くなる可能性があります。

 宣伝広報では主に会社を非難・批判するわけですが、世間的にはその会社に勤めている方も同様に見られてしまいがちです。それぞれの方が、地域・学校・交友関係等でどのような思いをされるのか、といった視点からも考えてみてはいかがでしょうか。

 さらに、宣伝広報活動によって顧客・取引先・取引銀行等にも広く知られることとなっていきますので、会社の業績に少なからず影響が出ることがあります。それに伴い在職している労働者の給料賞与等の労働条件に悪影響が出ることもあります。

 在職している労働者の方々は「正当な労働組合活動を行っているのだから、自分たちの居心地や労働条件が悪くなってもしょうがない」と考えてくれるのでしょうか。それとも「あなたのせいで、自分たちの居心地や労働条件が悪くなっている」と考えたりするのでしょうか。

5.入会金・会費等を負担する場合があり、その他の費用を含め金銭負担について具体的に明示されていないことがあります。また、解決のためにするそれぞれの団体行動・団体交渉等の行動にかかる費用について「この行動一回につきいくらです」や「この過程でいくらです」等の明示がされていないこと・解決した場合の報酬金についても明示されていないことがあります。「カンパ」等と称して、請求する根拠の不明な金銭を請求されることもあります。

 相談の際には、はっきりとよくわかるように費用・活動内容につき明示されているのか、口頭ではなく書面で明示されているのかを確認し、加入・依頼されるのであれば契約書の内容、特に費用・活動内容についてしっかり確認したほうがいいです。相談の際に伝えられた内容と契約書の内容に相違が無いかも要確認です。

6.あなたが他の組合員に援助してもらうのと同様にあなたも他の組合員を援助する等組合活動をしなければなりません。相互扶助です。したくなくても、他の組合員の問題を支援したり、週末などの何かの大会か勉強会のようなものに出席する必要がでてきますので、自分の労働問題の解決のため以外に時間が必要になってくることがあるということです。

7.士業ですと、弁護士以外は監督官庁があり、また会則・倫理規定・綱紀委員会等が制定されているので、法違反はもちろん士業として不適切な業務を行えば処分されるといった規制がありますが、労働組合には監督官庁が無く、内部の統制・規制については各組合ごとに違います。

 労働組合の規約の制定・提出について定めた条文は労働組合法にありますが、団体交渉する等でしたら、規約が制定・提出されていなくてもできてしまいます。

8.外部労働組合対策の業務をアピールしている弁護士の方は多いです。

主に「外部労働組合で解決」が向いている方

団体行動・団体交渉のしたい方

行政書士で解決

主な良いと思われる点

  1. 内容証明郵便で送る文書を作成してくれます

1.例えば未払いとなっている残業代があるという場合には、まず「内容証明郵便」で相手方に文書を送付することが多いです(催告する)。

 行政書士はこの「内容証明郵便」で送付する文書を作成してくれます。ただし、詳しくは後述しますが、あなたが言ったとおりに書くだけしかできません(代書のみ)。

主な良くないと思われる点

  1. 内容証明郵便を出すこと、送付する文書の書式は難しくありません
  2. あなたが言ったとおりに書いてもらうことしかできません(代書のみ)
  3. 労働・社会保険分野に詳しくありません
  4. ADR・裁判所における手続の場面において有効にできることはありません

1.内容証明郵便の出し方、送付する文書の書式・書き方については、難易度は低いです。インターネットで検索すれば多くの情報が出てきますので、一般の方でも問題なくできます。わかりやすい本も書店にたくさん置いてあります。郵便局で聞いても教えてくれます。

 また、電子内容証明サービスというインターネット上で作成送付できる内容証明郵便も日本郵便のサイトに載っていますので、ご覧ください。こちらのサービスですと、書式もより簡単になっていて24時間差し出しできます。

2.内容証明郵便で送付する文書の内容について、相談すること・助言すること・判断すること・代理して作成することはできません。

 できるのは、あなたが言ったとおりに何ら判断することなく書くことです(代書のみ)。例えば、解雇について妥当かどうか相談すること・助言すること・判断すること、その他具体的なあなたの労働問題に関する事情に違法性が有るのか無いのかといったことについて相談すること・助言すること・判断することはできません。また、代理権は無いので「文書作成:行政書士○○」と書くことはできますが「代理人:行政書士○○」と書くこともできません。

 例えば、未払いの残業代についての話ですと、どの時間が労働時間にあたるのか、どの労働時間が残業代が支払われるべき労働時間なのか、どの残業代が支払われるべき労働時間がどのような率で割増賃金を計算すればいいのか等といったことについて、相談・助言・判断することはできません。この例の場合ですと、できるのは、あなたが言ったとおりに何ら判断することなく計算し、あなたが言ったとおりに何ら判断することなく文書にして作成することです(代書のみ)。

3.行政書士になる試験において、労働社会保険諸法令は試験科目にありません。

4.相談・助言・交渉・和解・代理できるADR・裁判所における手続はありません。

主に「行政書士で解決」が向いている方

内容証明郵便で送付する文書を助言・判断無しで作成だけしてほしい方

司法書士で解決

主な良いと思われる点

  1. 裁判所に提出する書類を作成してくれます

1.簡易裁判所の管轄となる事件(訴額140万以下)については、裁判所に提出する書類の作成に加えて相談・交渉・和解・代理することができます。その他の事件については、あなたの言う通りに助言・判断無しで書くことしかできません(代書のみ)。

主な良くないと思われる点

  1. 労働・社会保険分野に詳しくありません
  2. 扱えない事件があります
  3. 裁判所に提出する書類は、裁判所の窓口で書き方を教えてくれます

1.司法書士となるための試験には、労働社会保険諸法令についての科目はありません。自分で学習して詳しい方もいるとは思いますが、かなり少数ではないでしょうか。

 どのように詳しいか詳しくないかを見分けるのは難しいですが、ひとつの方法としては、HPを見て「残業代請求」「未払い賃金請求」は業務がしっかりアピールされているのに、その他の労働問題についての業務の案内が無い・アピールの度合いが違う等の場合は、あまり詳しくない可能性があります。

 なぜかというと労働問題の中でも「残業代請求」「未払い賃金請求」は、他の労働問題に比べて比較的構造が単純・明解であり争点がわかりやすいからです。その他の労働問題に比べれば短い時間で業務に必要な最低限のレベルまではいけますので、とりあえずまずはこの業務だけできるようにしたという方はある程度いるのではないでしょうか。

 実際には、細かい計算ミスがあったり見落とし・判断ミスがあったりで、本来請求するべき額より低額で計算してしまっている場合もあり得ます。依頼者はそこまで気づけませんので、もしかすると自分の知らない間に損をしてしまっている可能性があります。

 訴額140万以内の労働問題ならどのような労働問題でも扱えるはずなのに、なぜか「残業代請求」「未払い賃金請求」ばかりアピールされているということは、その他の労働問題については「自信が無い」レベル、「残業代請求」「未払い賃金請求」については「最低限できる」レベルということかもしれません。

 また、「残業代請求」「未払い賃金請求」の事件は、その他の労働問題の事件に比べて、いわゆる勝ったときに得られる金銭利益が大きくなりやすいです。その他の労働問題の事件の中でも例えば、いじめ・ハラスメントに関する事件ですと、勝っても得られる金銭利益は小さくなりがちです。

 勝ったときに得られる金銭利益が大きいということは、依頼を受けた人の得られる利益も大きくなるということです。

 手続を利用・活用して事件が解決するまでの難易度・手間・労力はいじめ・ハラスメントに関する事件のほうが「残業代請求」「未払い賃金請求」の事件よりもかなり大きいです。

 その他、総合労働相談コーナーの相談の中ではいじめ・ハラスメントに関する相談が一番多く、当事務所でもお客様からのご相談内容としては、いじめ・ハラスメントに関するものが一番多いです。

 いじめ・ハラスメントに関する事件と「残業代請求」「未払い賃金請求」に関する事件を比較してまとめると、次のようになります。

  • 相談の数:いじめ・ハラスメント>残業代・未払い賃金
  • 構造の難易度:いじめ・ハラスメント>残業代請求・未払い賃金
  • 解決までの手間・労力:いじめ・ハラスメント>残業代請求・未払い賃金
  • 勝った場合の金銭利益:いじめ・ハラスメント<残業代請求・未払い賃金

 上表の内容を依頼を受ける側から考えてみると、いじめ・ハラスメントに関する事件は「割に合わない事件」であり、「残業代請求」「未払い賃金請求」に関する事件は「割に合う事件」といえます。

 わかりやすく言うと、いじめ・ハラスメントに関する事件を扱っても難しくて手間・労力がかかるのにあまり「儲からない」、「残業代請求」「未払い賃金請求」に関する事件を扱うと比較的簡単で手間・労力もあまりかからずに「儲かる」ということです。

 世の中にはいじめ・ハラスメントに関する労働問題のほうが多いのに、「残業代請求」「未払い賃金請求」に関する労働問題の解決をアピールしている士業が多いのは上記の内容による理由が大部分と考えられます。

 いじめ・ハラスメントに関する事件等その他の労働問題に比べ「残業代請求」「未払い賃金請求」がアピールされているということは、世の中の労働問題の解決を願う気持ちより、自分が儲かりたい気持ちが強いということかもしれません。

 慈善目的でなく、営利目的で営業しているのであれば、このように考えて営業するのが当たり前かもしれませんが。

 なお、この考え方については、司法書士に限らず何らかの報酬を得て労働問題の解決に関する依頼を受けている人・団体にすべて当てはまりますが、労働問題の解決を謳っている司法書士のHPに多く見受けられる割合が比較的高く感じられたので、この箇所に記載しました。

 また、「残業代請求」「未払い賃金請求」に関する事件の解決を大きくアピールしている士業への依頼を考える際に特に注意していただきたいことについて、「8.最良の解決方法は?の「おすすめできない相談・依頼先」の項目で説明させていただいていますので、そちらもご覧ください。

2.司法書士には、簡易裁判所における訴訟代理権(相談・交渉・和解含む)しかありません(訴額140万以下)ので、解雇等の地位確認請求事件(訴額が160万となります)・訴額140万を超える事件(これらの事件は、裁判所における手続では地方裁判所の管轄となります)は相談・交渉・和解・代理できません。また控訴・上告審についても相談・交渉・和解・代理できません。

 HP等に「本人訴訟支援」「書類作成を通じて支援」等と記載されている労働問題解決に関する業務(訴額140万を超える事件および控訴・上告された事件についての業務)は、裁判所に提出する書類をあなたの言う通りに助言・判断無しで書くことです(代書のみ)。

 また、「本人訴訟支援」等と称して、代理権が無いのに、裁判所において、傍聴席から頷く・首を振るといったような形で何らかの指示をしたり、法廷外で指示・助言をしたりといった行為については、法違反の疑いがある行為ですので、そのような行為に関する提案をされたら、「その行為は法違反の疑いはないのですか」と聞いてみてもいいかもしれません。「裁判所に同行・付き添いしてサポートします!」等とHPに書いてあるようでしたら、そのような法違反の疑いがある行為をしているかもしれません。

 あなたの事件が明らかに訴額140万円以内であるならよいのですが、よくわからない場合は無駄足になってしまう可能性があります。また、訴額140万以内に抑えるために、依頼者にわからないように、請求すべきことを請求しなかったり、未払いとなっている給料・残業代などを本来請求できそうな額よりわざと低く計算して、140万円以内に収めて依頼を受けるといった話を聞いたこともありますので、ご注意ください。

3.書き方だけ知りたいのであれば、書式・記載例は裁判所のHP等でダウンロードできますし、提出時に書類に不備があれば窓口で教えてくれます。インターネットで本人訴訟・訴状書き方等で検索すれば情報はそれなりにありますし、わかりやすい本も売っています。

主に「司法書士で解決」が向いている方

裁判所に提出する書類を助言・判断無しで作成してほしい方

社労士で解決

主な良いと思われる点

  1. 労働・社会保険分野に詳しいです
  2. ADRの範囲内で相談・交渉・和解・代理できます
  3. ADRでは相手方に代理人がつかないことがよくあります
  4. 補佐人として、裁判所において、弁護士とともに裁判所に出頭し、陳述することができます
  5. 費用が比較的安いです

1.労働・社会保険分野についての国家資格者であり、労働問題解決以外の業務でも労働・社会保険分野に関する業務がほとんどですので、どこの社労士のところに行ってもある程度の能力は期待できます。

2.ADRについての依頼を受けて終了するまでの間には、ADRの場での交渉・和解・代理だけでなく、ADR以外の場でもあなたを代理して相手方と直接交渉を行って和解することができます。

3.俗っぽい言い方になりますが、使用者にナメられているんでしょう。相手方に誰も代理人がついてない場合がよくあります。

4.労働事件については、裁判所の許可を得なくても、当事者に委任されて補佐人となり弁護士とともに出頭・陳述できます。補佐人の陳述は当事者又は訴訟代理人が自らしたものとみなされます。通常訴訟だけでなく、民事調停・少額訴訟・労働審判・仮処分・仮差押等の手続においても出頭・陳述できます(弁護士とともにではありますが)。

 相談当初からADR・裁判所における手続の最後まで連続してお客様の労働事件解決のお手伝いをすることが可能です。

 補佐人業務について詳しくは、「6.勝つための基礎知識2」「7.勝つための基礎知識3」で説明させていただきます。

5.弁護士と比べると安いです。当事務所に依頼いただいた場合の費用については、「6.勝つための基礎知識2」「7.勝つための基礎知識3」に記載してありますのでご覧ください。

主な良くないと思われる点

  1. 労働者側で事件を引き受ける方は少ないです
  2. 裁判所に出す書類は、補佐人業務の範囲外ですと単独で作成できません
  3. 労働事件の手続を利用・活用した解決について詳しい方・積極的に扱っている方はほとんどいません

1.特定社労士でも積極的に個別労働関係紛争に関する依頼を引き受けていない方が多いです。また、全体では、労働問題解決以外の業務について会社から依頼されて主な業務としている方が多いため、引き受けても会社側での事件だけか、顧問契約先における事件だけという方が多いです。

2.補佐人業務の範囲内の書類は作成可能です。また、その他裁判所に提出する書類については、代理人の弁護士と協働して作成できます。

3.労働問題について詳しい方はそこそこいますが、労働事件の手続を利用・活用した解決について詳しい方・積極的に扱っている方はほとんどいません。

 社会保険労務士になる試験においては、私人間(労働問題ですと主に労働者と使用者の間)の権利義務に関する法律(民法)や私人間の争いごとを解決する手続に関する法律(民事訴訟法)についての試験科目はありません。

 社会保険労務士が受験することができる「特定社会保険労務士」試験においては、民法及び民事訴訟法に関する試験内容及び研修がありますが、司法書士及び弁護士になるための試験科目及び研修と比べますと、その難易度・内容はかなり簡単・簡易なものです。

 HPを見て、費用が載っていない・費用しか載っていない・他の業務の案内よりかなり後のほうに案内されているような事務所はあまりおすすめできません。

主に「社労士で解決」が向いている方

低額で迅速な解決を目指したい方、労働審判・通常訴訟に万全の態勢で臨みたい方

弁護士で解決

主な良いと思われる点

  1. 相談・交渉・和解・代理・書類作成してくれます
  2. 労働問題に力を入れている方・大変詳しい方がいます
  3. 労働問題の以外の問題が複合している場合でも対応可能です
  4. 裁判所における手続の進行に詳しいです

1.ほとんどの場面で制限なく行うことができます。労基署への申告は弁護士であっても代理が認められたと聞いたことが無いです。

2.大都市部ですと検索すれば見つかります。ただし、大都市部以外には少ないです。

3.労働問題以外の問題についても分野の制限なく取り扱えます。

4.裁判所における手続の進行に関しては、資格取得のための学習・その後の研修・実務等において深く研鑽していると思われます。

主な良くないと思われる点

  1. 他士業より費用が高いです
  2. あらゆる相談ができますが、あらゆる法律に精通しているとは限りません
  3. 敷居が高く感じる場合があります
  4. 乗り気ではない場合があります
  5. 時間がかかる場合があります
  6. 複数人在籍の事務所では担当する弁護士を選べない場合が多いです
  7. 相手方にも弁護士がついてガードがかたくなりやすいです
  8. ごく一般的な労働者としての経験が多い方があまりいません

1.司法書士・社労士と比べると高いです。だいたい平均的にかかる費用について、「8.最良の解決方法は?」で記載しましたのでご覧ください。

2.弁護士は制限なくあらゆる相談を受けることができますが、それは相談を受けることができる内容に規制が無いということで、必ずしもどのような相談に対しても専門的で的確な回答ができる・問題の解決に向けて専門的に的確に依頼に応えることができることまでは保証されていません。

 法律の数は大変多く分野も当然に多いです。すべての法律すべての分野について精通するということは弁護士でもさすがに難しいと思われます。個人個人の得意とする分野を3つくらい挙げて営業されている方が多いです。HPを見て、得意分野に労働分野が入っていない方、事務所の業務案内で労働分野の説明が比較的少ない・アピールされていないといった場合は労働分野にあまり詳しくない可能性もあります。相談の冒頭に「労働分野はあまり詳しくないんですがね…」と言われたという話も聞いたことがあります。

 また、弁護士となるための司法試験においては労働法は選択科目(そもそも選択科目が無い時期もあった)であり、労働法を選択される方は例年およそ3割前後です。相談の際に「選択科目は何を選ばれたのですか」と聞いてみてもいいかもしれません。

3.むしろ敷居が低いと感じる場合のほうが少ないかもしれません。士業全体としては、先生的な感じのする方が減りサービス業的な感じのする方が増えてきているような気はしますが、弁護士の方は相変わらず「威圧感」というか「権威感」のようなものを感じさせる方が多いです。

 事務所のHPを見てみると、自己紹介・事務所紹介・業務案内等の内容・書き方・デザイン等からだいたいの雰囲気は掴めますので、ご覧いただくといいです。

4.この場合はほとんどがいわゆる「費用倒れ」です。儲からないから、儲かっても少額だから、手間がかかり過ぎるから、もっと「割の合う」事件に時間を使いたいという場合がほとんどではないかと思われます。相談がほぼ終わっていると思われるのに依頼を勧めてこない、他の解決方法についてやたら勧められるといった感じですと、この場合が考えられます。あなたの事件は「割に合わない」ということです。相談時間のキリのいい辺りになると「家に帰ってゆっくりもう一度考えてみてください」的な雰囲気で丸め込まれて追い出されることもあります。

 HPではよく「何でもお任せください!」というような文言で力強くアピールされていますが、「何でもお任せください!(割に合わない事件は除く)」という表記に変えたほうがより正しいのではないかと思います。

 訴額が50万を下回るような事件では多くあるようですが、訴額が100万を超えるような事件でも依頼を受けたがらない場合があるようです。事務所の報酬表を見て、着手金が高額である、訴訟にかかる費用が高額である場合は、訴額の低い事件は回避したいという考えがあるかもしれません。

5.この事務所に依頼したいなと思えるような良い印象の事務所はおおむね多忙です。依頼しても速やかに動いてくれない(動けない)場合もあります。

6.HPを見たりして、この弁護士の方に依頼したいなと思っても指名できない場合が多いです。指名できても「指名料」が別に必要だったりする場合もあります。

7.弁護士に対しては、どの使用者もほぼ自分側にも弁護士をつけます。

8.ほとんどの弁護士は民間企業で長期間働いたことがありません(雇われ弁護士除く)。

 比較的若い方ですと大学の法学部を卒業し法科大学院を出て司法試験合格で弁護士に、少し年配の方ですと大学の法学部を卒業し司法試験合格で弁護士になっている方がほとんどです。民間企業に就職した経験なく弁護士になる方より、民間企業に就職してから弁護士になる方のほうがかなり少ないです。

 多少のアルバイトぐらいはしたことがあるかもしれませんが、いわゆる就職をして一般的な会社人生を送った経験を持った方は少ないです。

 就職をして会社人生を送った経験がある方も、それほど期間は長くありませんので、多くの社会人経験・労働者経験があるといえる方はあまりいません。

 したがって、労働問題の起きている・起こった「現場」について弁護士は詳しいのか、と言われると、「現場」については多くの弁護士はあまり詳しくないかもしれませんという答えになります。

 また、少しイヤミな言い方になりますが、みなさんいわゆるそこそこ良い大学を卒業していますので、働いていたといっても、「小綺麗なオフィスでパリッとしたスーツを着て高い給料もらって働く職場」が多いかもしれません。

 汗水垂らして下げたくない頭をペコペコ下げて高くも無い給料で働くような、ごく一般的な労働者の経験を長い期間持っている方は少ないでしょう。

 弁護士は、よくある一般的な仕事の「現場」において働いた経験が乏しいので「現場にあまり詳しくなく」、ごく一般的な労働者と同様の働き方で「働いた経験は少ない」方が多いのではないでしょうか。

主に「弁護士で解決」が向いている方

費用は高額でもいい方

次はこちらから:より望ましい労働問題の解決とは「どのような」解決なのか、個別労働関係紛争を解決する手続においてどのような考え方・しくみによってどのような判断がなされるのか、望ましい解決を得るためにはどのようなことを理解・意識して臨めばよいのか

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