今までの労働相談1から労働相談7で考えてきたことを合わせて比較検討したり、士業に依頼するとどのようなお金の動きになるのかの例を見ていただくとともに、どの機関・団体・士業に関わらず「おすすめできる相談・依頼先、おすすめできない相談・依頼先」についても見ていただいて、実際にどのようなところでどのような機関・団体・士業に労働問題の解決を手伝ってもらうのか、お客様自身に決めていただきたいと思います。
ここで、労働相談1から労働相談7のそれぞれのページで、どのようなことを書かせていただいたのか一度振り返ってみます。
「1.どんな問題が起きましたか」では、労働相談1から9までのページを作成した趣旨及びその内容の簡単な説明と、お客様が直面するご自分の問題が労働問題なのかその他の問題なのか、労働問題だったらどのような労働問題なのかがわかる手助けとなるようなこと。
「2.こんな用語出てきます」では、お客様が労働問題について自分で調べものをする際や労働相談に行った際に、その中で使われる用語がよくわからなくて困るとか通常社会一般で使われる意味と若干意味が違うようで戸惑うといったことがあまり無いように、労働問題解決の過程においてよく使われる用語についての簡単な説明。
「3.「どこで」解決を?」では、解決するところ(場面)について、「4.「誰で」解決を?」では、解決する機関・団体・士業について、それぞれ「主な良いと思われる点」「主な良くないと思われる点」を挙げ、どのように良いと思われるのか良くないと思われるのか。
「5.勝つための基礎知識1」では、より望ましい労働問題の解決とは「どのような」解決なのか、個別労働関係紛争を解決する手続においてどのような考え方・しくみによってどのような判断がなされるのか、望ましい解決を得るためにはどのようなことを理解・意識して臨めばよいのか。
「6.勝つための基礎知識2」「7.勝つための基礎知識3」では、個別労働関係紛争を解決する手続において、どのように手続が進行するのか、手続の様々な場面でどのようなことに気を付ければいいのかを中心に、それぞれの手続及び手続外で当事務所ができること、当事務所ができるそれぞれの業務の進め方・内容・費用。
「6.勝つための基礎知識2」では「あっせん・調停」の手続及び「労働相談」「同行・付き添い」「あっせん・調停における代理人」業務。
「7.勝つための基礎知識3」では「労働審判」「通常訴訟」の手続及び「労働審判・通常訴訟における補佐人」業務。
長くなりましたが、ここまで見てきていただけましたでしょうか。この労働相談のページは1から9まで順に見ていただきたい内容となっていますので、まだ前のページを見てきていただいていないようでしたら、先にそちらからご覧ください。
できることできないこと等
各機関・団体・士業について、【相談】【直接交渉】【ADR】【裁判所における手続】の場面に分けて下の表の各項目で、できることできないこと等を比較検討してみます。
- 【相談】助言・判断の範囲、費用、時間帯、場所、相談員の選択、相談時間の長さ、(知識・経験・)能力等の担保、その他
- 【直接交渉】(内容証明郵便で送付する)文書の作成、団体行動、団体交渉、本人による個別交渉、和解、代理、その他
- 【(個別労働関係紛争についての)ADR】(提出する資料・)文書の作成、交渉、和解、代理、その他
- 【(個別労働関係紛争についての)裁判所における手続】(提出する資料・)文書の作成、交渉、和解、代理、補佐、その他
※行政書士については労働問題の解決において「内容証明郵便で送る文書を助言・判断無く作成すること」しかできませんので、比較する表からは外します。
※司法書士は「認定司法書士」、社労士は「特定社労士」に限ります。
※この下の表の社労士の項目の内容は当事務所についてではなく、一般的な社労士事務所についてです。
項目 | 自分 | 総合労働相談 | 左記相談以外(公) | 外部労働組合 |
---|---|---|---|---|
相談に関すること | ||||
助言・判断の範囲 | – | 刑事のみ | 取扱分野の一部のみ | 団体行動の範囲内 |
費用 | – | 無し | 無し | 無しが多い |
時間帯 | – | 平日日中 | 原則平日日中 | 時間外対応有もある |
場所 | – | 来所のみ | 来所のみ | 原則所在地のみ |
相談員の性別選択 | – | 女性相談員選択可 | 選択できる場合も有り | 選択できる場合も有り |
相談時間の長さ | – | 長時間不可 | 長時間不可 | 原則長時間不可 |
労働問題に関する知識等の担保 | – | ある程度はある | 無し | 無し |
その他 | – | – | – | – |
直接交渉に関すること | ||||
文書の作成 | – | できません | できません | 団体行動の範囲内のみ可 |
団体行動 | できません | できません | できません | できます |
団体交渉 | できません | できません | できません | できます |
個別交渉の代理 | – | できません | できません | できません |
和解の代理 | – | できません | できません | できません |
その他代理行為 | – | できません | できません | できません |
その他 | – | – | – | – |
ADRに関すること | – | できません | できません | 団体行動の範囲内のみ可※1 |
裁判所における手続に関すること | – | できません | できません | 団体行動の範囲内のみ可 |
※1.外部労働組合は上の表の他に、労働関係調整法に定める斡旋(あっせん)・調停・仲裁の範囲内で相談・交渉・和解できます。
項目 | 司法書士 | 社労士 | 弁護士 |
---|---|---|---|
相談に関すること | |||
助言・判断の範囲 | 訴額140万以内 | ADR・補佐人の範囲内 | すべての場面 |
費用 | 30分2500~5000円 | 30分2500~5000円 | 30分5000円 |
時間帯 | 原則平日日中 | 原則平日日中 | 原則平日日中 |
場所 | 原則来所のみ | 原則来所のみ | 原則来所のみ |
相談員の性別選択 | 選択できる場合も有り | 選択できる場合も有り | 選択できる場合も有り |
相談時間の長さ | 長時間可 | 長時間可 | 長時間可 |
労働問題に関する知識等の担保 | 詳しい人は少ない | ある程度はある | 個人差がある |
その他 | – | – | – |
直接交渉に関すること | |||
文書の作成 | 訴額140万以内 | ADRの範囲内 | できます |
団体行動 | できません | できません | できません |
団体交渉 | できません | できません | できません |
個別交渉の代理 | 訴額140万以内 | ADRの範囲内 | できます |
和解の代理 | 訴額140万以内 | ADRの範囲内 | できます |
その他代理行為 | 訴額140万以内 | ADRの範囲内 | できます |
その他 | – | – | – |
ADRに関すること※1 | |||
文書の作成 | できません | できます | できます |
交渉の代理 | できません | できます | できます |
和解の代理 | できません | できます | できます |
その他代理行為 | できません | できます | できます |
その他 | – | – | – |
裁判所における手続に関すること | |||
文書の作成 | できます | 補佐人の範囲内 | できます |
交渉の代理 | 簡裁のみ | できません | できます |
和解の代理 | 簡裁のみ | できません | できます |
その他代理行為 | 簡裁のみ | できません | できます |
その他 | 補佐人陳述可※2 |
※1.この表におけるADRは行政型ADRについてです。
※2.補佐人として、裁判所において、弁護士とともに裁判所に出頭し、陳述することができます。詳しくは「7.勝つための基礎知識3」に記載しました。
「5.勝つための基礎知識1」「6.勝つための基礎知識2」から順に併せて読んでいただきますと、よりわかりやすくなっていますので、ぜひご覧ください。
手続における費用の比較
司法書士・社労士・弁護士について、ADR・裁判所における手続のそれぞれにおいて、おおむねこれくらいの費用がかかり、他士業と比べると高いのか安いのかが見てわかる表を作成しました。
司法書士・弁護士については、インターネット上で労働問題を扱っている事務所を無作為に30選んで、おおむね平均的であろう金額にしました。社労士については当事務所における費用です。
なお、金額は税抜き実費別の表示となっています。
項目 | 司法書士 | 社労士(当事務所における費用) | 弁護士 |
---|---|---|---|
相談料 | 30分5,000円 | 2時間4,000円(以降1時間毎2,000円) | 30分5,000円 |
着手金※1 | |||
直接交渉 | 50,000円 | – | 100,000円~※2 |
ADR※3 | – | 請求金額の5%(最高100,000円、最低50,000円)※4 | 200,000円~ |
労働審判 | – | 請求金額の3%(最高50,000円、最低30,000円)※4 | 200,000円~ |
訴訟 | 50,000円~(簡裁のみ) | 請求金額の5%(最高100,000円、最低50,000円)※4 | 300,000円~ |
報酬金 | |||
解雇等事件※5 | – | ADR:15%+200,000円、労審:8%+100,000円、訴訟:10%+150,000円 | 20%+400,000円~ |
その他の事件 | 15% | ADR:15%、労働審判:8%、訴訟:10% | 20% |
日当 | 1時間5,000円 | 1時間2,000円 | 1時間10,000円 |
※1.解雇・退職・雇止め事件における着手金について、当事務所ではその他の事件の倍の金額をいただいています。弁護士の方も倍となっている方が多いです(倍となっていない方は、その他の事件の着手金がそもそも高額の場合が多いです)。
※2.着手金を受けた後にその次の手続も受任することになると、次の手続の着手金と前の手続の着手金の差額だけ受けたり次の手続の着手金が半額になるようにしている事務所もあります。
例:直接交渉で100,000円の着手金を受けたが交渉はまとまらず労働審判を申し立てることとなった。本来労働審判の着手金は200.000円だが、すでに直接交渉で100,000の着手金を受けているので差額の100,000円を労働審判の着手金として受ける。しかし労働審判でもまとまらなかったので、通常訴訟を起こすこととなった。本来通常訴訟の着手金は300,000円だが、前から続いての通常訴訟なので着手金は半額の150,000円とする。着手金の合計は350,000円となる。
※3.この表におけるADRは行政型ADRについてです。
※4.あっせん・調停における当事務所の業務は、代理人としての業務です。労働審判及び訴訟における当事務所の業務は、補佐人としての業務です。業務の内容について詳しくは「5.勝つための基礎知識1」「6.勝つための基礎知識2」「7.勝つための基礎知識3」をご覧ください。また、着手金及び報酬金の金額は一人当たりの金額となります。
当方があっせん・調停についての代理人業務を受任したあっせん・調停を経てから、労働審判について補佐人業務を受任させていただいた場合は、労働審判における補佐人業務についての着手金は上の表の金額から10,000円引きとさせていただきます。
当方があっせん・調停についての代理人業務を受任したあっせん・調停を経てから、または労働審判について補佐人業務を受任した労働審判を経てから、通常訴訟について補佐人業務を受任させていただいた場合は、通常訴訟における補佐人業務についての着手金は上の表の金額から20,000円引きとさせていただきます。
当方があっせん・調停についての代理人業務を受任したあっせん・調停を経て、さらに労働審判について補佐人業務を受任した労働審判を経てから、通常訴訟について補佐人業務を受任させていただいた場合は、通常訴訟における補佐人業務についての着手金は上の表の金額から20,000円引きとさせていただきます。
※5.職場復帰できた場合は金銭利益の他にいくらかいただく事務所がほとんどです。当事務所では200,000円いただいています。弁護士ですと400,000円~くらいが多いです。
費用計算例:解決にかかった費用とお客様の金銭利益
上の司法書士・社労士・弁護士についての「手続における費用の比較」の表を基に、いくつかの費用計算例を出してみます。青下線が士業に支払う費用、黄下線がお客様の利益(プラスの場合)、ピンク下線がお客様の利益(マイナスの場合)です。
訴額が1,000,000円で得られた金銭利益は800,000円でした。司法書士は簡易裁判所、社労士はADR、弁護士は労働審判でそれぞれ手続を行いました。
- 司法書士:着手金50,000円+報酬金120,000円(800,000円x0.15)=170,000円:お客様の金銭利益は630,000円です。
- 社労士 :着手金50,000円+報酬金120,000円(800,000円x0.15)=170,000円:お客様の金銭利益は630,000円です。
- 弁護士 :着手金200,000円+報酬金160,000円(800,000円x0.2)=360,000円:お客様の金銭利益は440,000円です。
訴額が2,000,000円で得られた金銭利益は1,400,000円でした。社労士はADR、弁護士は労働審判でそれぞれ手続を行いました。
- 司法書士:取り扱えません。
- 社労士 :着手金100,000円+報酬金210,000円(1,400,000円x0.15)=310,000円:お客様の金銭利益は1.090,000円です。
- 弁護士 :着手金200,000円+報酬金280,000円(1,400,000円x0.2)=480,000円:お客様の金銭利益は920,000円です。
訴額が1,600,000円で得られた金銭利益は500,000円でした。職場復帰はできました。社労士はADR、弁護士は労働審判でそれぞれ手続を行いました。
- 司法書士:取り扱えません。
- 社労士 :着手金100,000円+報酬金200,000円+75,000円(500,000円x0.15)=375,000円:お客様は職場復帰を果たし、金銭利益は125,000円です。
- 弁護士 :着手金400,000円+報酬金400,000円+100,000円(500,000円x0.2)=900,000円:お客様は職場復帰を果たし、金銭利益は-400,000円です。
訴額が500,000円で得られた金銭利益は100,000円でした。司法書士は簡易裁判所、社労士はADR、弁護士は労働審判でそれぞれ手続を行いました。
- 司法書士:着手金50,000円+報酬金15,000円(100,000円x0.15)=65,000円:お客様の金銭利益は35,000円です。
- 社労士 :着手金50,000円+報酬金15,000円(100,000円x0.15)=65,000円:お客様の金銭利益は35,000円です。
- 弁護士 :着手金200,000円+報酬金20,000円(100,000円x0.2)=220,000円:お客様の金銭利益は-120,000円です。
事務所によって報酬の基準は少しずつ違いますので、必ずしもこれらの表どおりの金額にはなりませんが、だいたいこのような感じのお金の動きになるんだなぁと参考にしていただければいいです。
最良の解決方法は?
どんなところに相談・依頼すればいいのか、少しでも見えてきたでしょうか。「1.どんな問題が起きましたか」で言ったように、結局のところお客様一人一人によって最良の解決方法は違ってきます。
参考になりそうなことはなるべく書かせていただきましたが、各機関・団体・士業の主な良くない点についてはかなり書こうかどうか迷った内容・表現もありました。
ほんの一部のところにしか当てはまらないかもしれないようなこともあるかもしれませんが、お客様が時間・お金・労力・気力を無駄にしないように、別のところに行ってまた一から説明するのも大変なので依頼してしまった、強く依頼を勧められ断り切れずに依頼してしまった、言葉巧みに依頼を勧められよくわからないのに依頼してしまったといった事態にならないように、できるだけ最初に相談に行ったところで望ましい解決に向かえるように書きました。
偉そうなことも書きましたが、私自身苦手なこともありますし、時にはお客様の事件の解決をお手伝いさせていただいている中で知らないことわからないことが出てくることもあります。慢心せず、まだまだ未熟で力不足なのだと自分に言い聞かせて日々取り組んでいます。
最後に、どの機関・団体・士業に関わらず「おすすめできる相談・依頼先」と「おすすめできない相談・依頼先」をあげてみましたので、こちらもご覧いただきたいと思います。
おすすめできる相談・依頼先
- 費用が明示されている
- 解決できる能力がある
- 人についても仕事についても信頼感・倫理感が感じられる
- 情熱が感じられる
- お客様の希望を第一にしている
1.相談・依頼を受けてお金をいただくのにあたって、常識的に考えて至極当たり前のことだと思うのですが、なぜか明示されていない明示しないところ・人がいます。詳細までは明示されていなくても、ほぼわかるレベルのところ・人に安心して相談・依頼してください。
2.お客様が自分ではできない・やらないから他人にお金を払って依頼されるわけですので、お客様が望まれる解決につき最低限必要な能力が備わっていないといけません。
3.他人と他人の間に入って他人のお金や権利をやり取りする仕事です。当然信頼感倫理感が感じられるところ・人でないと安心して依頼できないと思います。特に代理業務は、本人の代わりに行って、その結果が本人がしたと同じになるものですので、より高い信頼感・倫理感が感じられないといけません。
4.人生において、労働問題で悩み苦しみ、どう解決していくかということは、一人一人のお客様にとってそうそうあることではない大きな出来事です。望ましい解決を迎えられるかどうかは後の人生に大きな影響があります。
決してよくある事案の一つなどと考えず、お客様の人生の大事なことに関わる責任と覚悟を持って、数ある選択肢の中から選んでもらったことに感謝し、お客様の労働問題をお客様の望まれる解決に向けて情熱を持って取り組んでくれそうなところ・人に依頼してください。
5.これも1と同様に、相談・依頼を受けてお金をいただくのにあたって、常識的に考えて至極当たり前のことだと思います。お客様の望まれる解決を見つけその方向に進むために提案・助言するのは当然としても、何事も最終的に決定されるのはお客様ご自身の判断によってであるべきです。
おすすめできない相談・依頼先
- 自分と合わない
- できないことについてはっきりと記載されていない
- 自分のところ以外の選択肢について記載が無い・少ない
- HPに書いてある・相談で伝えられる、内容が難しい・専門用語が多い
- 威勢の良さが目立つ、勝ち負けによる費用差が少ない
- 「相談無料着手金無し報酬金のみ」もしくは「完全成功報酬制」で「残業代請求」の依頼を受けている
1.解決できるところ・人によって、それぞれ、考え方・解決方法・人柄・雰囲気・費用等違いがあります。お客様ご自身も同じように一人一人違います。ご自分とばっちり合ったところ・人というが見つかればいいのですが、なかなか見つからないでしょう。
「全然合わないなぁ」と感じるレベルですと、相談・依頼するにあたって、全体的にスムーズに進まない・意見が合わない(特に解決の方向性・解決の手法・解決の程度について)ことが多いですので、そこそこ自分と合いそうな、同じような目線で話せるところ・人を見つけて、相談・依頼されるといいです。あちこちのサイトを見て自分と合いそうな人のところに何か所か行くくらいの気持ちは必要です。
2.どのようなところでもできることは十分にアピールされています。お客様の希望することがそのできることの範囲内に全て入っていればよいのですが、入っていない場合もあります。依頼してから「あれ?これはやってもらえないんだ…しまったなぁ」となってしまう危険性がありますので、他のところでできることで自分のところでできないことは、わかりやすくお伝えすべきです。
また、「本人訴訟支援」「本人訴訟サポート」「書類の作成を通じて支援・サポート」等と称して何らかの業務の依頼を受けている者にその業務を依頼するかどうか含めて相談する際には、「代書業務(依頼者の言ったとおりに書く)だけをするのか」「代書業務において、書く内容について相談に応じるのか・助言・判断するのか」「何らかの機関で手続する際には同行・付き添い等してくれて、何らかの助言・指示等してくれるのか」「代理行為もできるのか・するのか」とその権限の根拠を聞いて、依頼はせずに一度帰り、その権限と根拠について確認してみるといいです。
権限が無いのに(違法なのに)、そのような業務をしている者がいることがありますので、はっきりと確認されたほうがいいです。法に則って何らかの手続によってご自分の権利・金銭等を争うのに、相手方の法違反に対して争うのに、法に違反するような者を関与させてはいけません。
3.お客様にとっては、それぞれの機関・団体・士業は解決に向けての選択肢の中のひとつです。自分のところに依頼してほしい気持ちはわかりますが、お客様の労働問題の解決を第一に考えるならば、可能な限り自分のところ以外の選択肢についても紹介・案内すべきです。
4.簡単な言葉を使って平易な言い回しでお伝えするより、専門用語を使って難しい言い方でお伝えするほうが簡単です。なぜなら学者の本も公共機関からの情報も裁判所の裁判例も専門用語で難しい書き方をされていますので、そのままお伝えするだけでしたら、それほど難しくはないからです。
お客様にわかるようにお伝えしようと思うと、どうすれば伝わりやすいかなぁと考え、うーんと頭をひねることも多いです。専門用語を使って難しい言い方ばかりなようでしたら、もしかしたら「あんまりわかっていない」のかもしれません。
また、専門用語を使って難しい言い方をされると、能力的なものは感じられるのかもしれませんが、お客様にとっては結局「よくわかんない」になってしまいがちです。そのようなところに相談・依頼されても「よくわかんない」ままいろいろなことがお客様の意思とは関係なく進行してしまう危険性があります。
5.「あなたの権利は守ります!」「お任せください!」「もう大丈夫です!」「労働者の味方です!」等々、HPにはよく威勢のいい文言が大きくアピールされています。本当に書いてあるとおり受け取っていいのでしょうか。
労働問題は相手方のいる問題です。相手方もボンヤリしているわけはありませんので、こちらが何らかの行動をとれば対抗してきます。特に労働問題では使用者に「労働者になんかナメられてたまるか!」「たかが労働者のくせに生意気だ!」みたいな気持ちがあるのか、交渉・手続がスムーズにいかないことも多いです(使用者が感情的になってしまう場合が多い)。また当然に、こちらの要望が認められる(勝てる)時もあれば、要望が認められない(負ける)時もあります。制度的にも戦える限界があります。やれるだけやっても1円の利益も得られないこともあるわけです。
依頼を受ける側では、勝てば儲けはそこそこ出ますが、負けても少しは儲けになる費用設定になっている場合が多いです。ただし、中には勝った場合の費用が安めで、負けてもそこそこ儲けになる費用設定(勝ち負けによる費用差が少ない)になっている場合もあります。そのようなところにはだいたい最初にあげたような威勢のいい文言が並んでいて、HPもやけに小綺麗で今風のデザインだったりします。
どういうことかというと、威勢はいいけど現実的なことがあまり書いていないところでは、「勝てばラッキー負けてもいいや」で、とりあえず耳障りのよい文言・綺麗なHPで受任件数を増やして、勝ち負けよりもこなした件数で売り上げを出しているわけです。
このようなところに相談・依頼すると、あまり詳しい事情も聞かれないままポンポンと進行して終了します。さらにひどいところですと、手間・時間のかかる通常訴訟をなるべく回避できるように、通常訴訟までいったらおそらくこの程度の金額で勝てるであろう事件でも、直接交渉・労働審判でかなり低い金額で和解して事件を終わらせてしまうということもあります。
件数をこなすために資格者がどうしてもやらなければいけない部分以外は、低賃金の無資格者にやらせて、とことん効率も追求しています。ビジネスモデルとしてはいいのかもしれませんが、倫理的にはいかがなのでしょうか。
いかに大量に受任していかに大量に処理するのか。そのような考えのところに相談・依頼すべきなのでしょうか。
「威勢の良さが目立つ、勝ち負けによる費用差が少ない」事務所がすべて上記のような業務の取り組み方をしている事務所であるわけではありませんが、いろいろなサイトを見る時に少し気にしてみていただけるといいかもしれません。
「労働者の味方」でも何でもなく、このような感じで、労働問題の解決を「ビジネスとして割り切ってやっている」ところがあるということを心にとどめておいてください。
6.※「相談無料着手金無し報酬金のみ」と「完全成功報酬制」は同じ費用システムです。費用システムというより集金システムと言ったほうがより正しいですが。ここでは「相談無料着手金無し報酬金のみ」という言葉を使って説明します。
この場合はさらに高い確率で「がっつりビジネスとして割り切ってやっている」と考えてもいいです。客は「カモ」だと考えられていると思ってください。
不思議なことに、その他の労働問題、「ハラスメントや解雇の問題等も相談無料着手金無し報酬金のみ」となっているかというと、そのようなところは見たことがありません。おかしいですよね、同じ労働問題なのになぜ問題の類型によって「相談無料着手金無し報酬金のみ」なのかそうでないのかわかれるのでしょうか。簡単に言うと「儲かるか儲からないかの違い」なのですが、それだけではよくわからないと思うので、以下長くなりますができるだけわかりやすく説明します。
「相談無料着手金無し報酬金のみ」とは、どのような集金システムかというと、和解なり審判なり判決なりどこかで相手方と話がまとまらないと費用が発生しない(受任者に利益が無い)という集金システムです。
この場合ですと「費用は報酬金の中からいただきますので、無料で依頼できます!」というのがワンセットで書いてあります。まずここの狙いとしては無料で依頼できることにより問い合わせをできるだけ多く取ることにあります。誰しも有料よりは無料に心ひかれます。相談料は司法書士・社労士で1時間5,000円弁護士で30分5,000円、着手金は司法書士・社労士で最低50,000円弁護士で100,000円がだいたい最低の相場ですので、無料との差は大きいです。
問い合わせたらまず聞かれる事情としては、「残業代は何年分もらっていませんか?」です。ここの狙いは回収できる可能性のある総額を把握することにあります。報酬金は獲得できた利益のうち25~35%ぐらいに設定(さらに+100,000円、200,000円という事務所もあります)されています(普通の事務所ですと、15~20%ぐらいです)ので、総額が高いということは儲けが大きくなるということです。次に聞かれることは「証拠になりそうなものは何かありますか?」です。ここの狙いとしては回収できる見込みがどれくらいあるのかということです。
この段階で客はランク分けされます。残業代請求権があるのは2年分が上限となりますので、2年に近いほど上位ランクです。証拠はタイムカード・タコメーターの記録等はっきりとした数字が把握しやすいものを持っているほど上位ランクとなります。ちなみにこの段階で総額も見込みも下位ランクですと、やんわりと断られます。上位ランクの客ほど、この後優先して処理が行われていきます。この段階での優先事項は、いかに上位ランクの客の相談の予約を早い日付で入れさせるかということになります。熟考されたり他の事務所に行ったりして心変わりされたらいけませんので。
問い合わせで対応している職員は無資格者の方がほとんどです。問い合わせマニュアルにしたがって矢継ぎ早に質問されますが、こちらから質問すると法律的な判断が必要なことは答えてくれません(無資格者が答えると違法になる)。「資格者に代わってください」といっても何だかんだ理由を付けて代わってくれない場合が多いです。
この段階ではいかに数多く総額と見込みのある客を相談の予約までつなげるかということが最優先ですので、客が資格者と相談したいなと思う希望は二の次です。資格者に代わってくれた場合でも「とりあえずこちらに来て一緒に相談しましょう」といった感じで相談の予約を促すばかりで電話ではあまり相談にのってくれません。電話で長々と相談にのるのは、時間の無駄、儲けにならないからです。電話相談無料ではなく、電話での相談の予約が無料だということです。
※通常お客様からの相談を受けていると、お客様が悩んでいて相談に来られた労働問題とは別の労働問題が見えてくる時があります。お客様自身は気づいていなくても悩んでいる労働問題に付随している労働問題、全く別の労働問題がある時があります。このような残業代請求のみの電話無料相談ですと、そのようなことに気づいてもらうことは期待できません。もし気づいてもらえてもスルーされると思っておいたほうがいいです。無料相談ではなく、あくまでも効率よく残業代請求についての相談の予約を獲得するための無料ツールですので。
相談に行ってもこちらからの話はあまり聞いてくれません。残業代を請求するのに必要な最低限のことだけを質問して、依頼後の流れについて最低限の説明をするだけで、後は契約書にハンコを押してねという感じです。客の話をじっくり聞いても儲けにならないからです。事務所によっては資格者はちょろちょろっと出てくるだけで、ほとんどの相談時間は事務職員が説明・質問するだけのところもあります。
また依頼時の見通しとしてはどれだけ勝てそうでも「難しいところもある案件ですが争える余地もありますので全力を尽くします。」等多少きびしめだったりします。なぜかというと、次の説明で触れる「大幅な譲歩」をする言い訳になるからです。
依頼後の動きとしては、早期の和解、これ狙いが最優先です。金額は大幅に譲歩しても直接交渉での早期の和解を最優先にします。
労働審判でも3~4か月の時間はかかりますし、ましてや通常訴訟となりますと1年~コースです。労働審判・通常訴訟において、申立書・訴状その他準備書面等提出する書類はそれぞれ作成に時間がかなりかかります。人証調べの準備にもかなり時間がかかります。
しかし時間をかけても報酬は変わりません。したがって時間をかけるのは無駄なのです。通常訴訟は当然、労働審判にもできるだけならないように、それ以前での和解を狙います。
通常訴訟までいっても勝てればまだいいのですが、負けることは確実に避けます。万が一通常訴訟になっても、判決が出る前に何が何でも和解に持ちこもうとします。この費用システムですと、客の手元に入るお金が無いと報酬金が発生しませんので、ただ働きになってしまいます。勝てる見込みがかなり高い事件だとそうでもないかもしれませんが、負ける可能性も若干ありそうな事件ですと、直接交渉で早期和解が最優先になります。
また、依頼当初の着手金は無しでも労働審判・通常訴訟に高めの着手金が設定されている場合は、客に労働審判・通常訴訟前に和解したほうが得だと思いこませることによって、直接交渉による早期の和解を目指しても不自然ではないと装っていると考えられます。
なお、このような事務所では、解雇等の他の事件を受任した際でも、通常訴訟まで争う気などは無く、残業代請求と同様にさっさと和解することを狙っています。
ここまで「相談無料着手金無し報酬金のみ」という集金システムについて説明させていただきました、ここからは実際にどのようなお金の動きになるのか、どれくらいの儲けがどのように出るのか説明させていただきます。
例えば、訴額2,000,000円の残業代請求事件があるとします。着手金無し報酬金30%で受任したとします。ほぼ勝てそうな事件なのですが、若干不利な要素(証拠が一部無い等)もあるとします。労働審判・通常訴訟までいったらおそらく1,600,000円くらいでまとまりそうだとします。このような場合に、労働審判・通常訴訟までいく前に、直接交渉で相手方に「1,000,000円で和解しましょう」と持ち掛けるわけです。相手方にも代理人がついていたりしますと「こちらがだいぶ不利ですし、これは相場よりだいぶ低い額なんで和解しちゃったほうが先に進む(労働審判・通常訴訟までいく)より得ですよ。このままだと先に進んだらもっと高い額でないと和解できませんよ。審判・判決ももっと高い額で出そうです。」と言われますので、早期和解となる可能性が高めです。
先に進んで1,600,000円の利益を得たら受任側の報酬金は480,000円ですが、1,000,000円の利益ですと300,000円の報酬金です。時間をかけて480,000円を取りにいくよりは、さっさと確実に300,000円もらっちゃおうということです。しかし客からの目線だと、前者ですと手元に1,120,000円残りますが、後者だと700,000円しか手元に残りません。ほぼ取れそうな、差額の420,000円という大金を実は損しているわけです。
しかし客には例えば「難しい案件でしたが、直接交渉でうまく和解できました。先に進んでたらもっと少ない額での和解か、もしかしたら和解どころか負けていたかもしれません。」というわけです。そして客は「先生ありがとうございました。おかげで700,000円取り返せました」となるわけです。
上記の例で、大幅に譲歩して和解で10件処理するのと労働審判・通常訴訟で2件処理するのが同じ時間・手間がかかるとすると、大幅に譲歩して和解した10件で得た事務所の利益は3,000,000円、労働審判・通常訴訟2件で得た事務所の利益は960,000円、大幅に譲歩して和解していくと2,000,000円以上得になるわけです。効率でいうと、同じ時間で3倍以上の利益をあげれるわけですね。客に損させたほうが事務所の利益がどんどん多くなるというわけです。
このような塩梅で大量の事件を処理して、事務所のHPには「○○○人の方から依頼をいただきました!」とか「○○○○○○○○○○円の残業代を回収しました!」とか実績が書かれることとなります。実態としては、上で説明したように客の利益を犠牲にしてできた実績です。
「残業代請求 相談無料」等で検索しますといろいろな事務所が出てきますが、上記のような事務所かどうか判別をつけたい場合のポイントは、HP等で判別するなら(すでに書いたこともありますが)、
- 残業代請求業務の費用システムが「相談無料着手金無し報酬金のみ」もしくは「完全成功報酬制」である
- 「ブラック企業から回収します!」「あなたのお金を取り返します!」「サービス残業は許しません!」「徹底回収します!」「お任せください!」「もう大丈夫です!」「労働者の味方です!」等威勢のいいアピールが目立つ
- 残業代回収等の実績のアピールが目立つ
- 「残業代請求」用の別ページ別サイトが作ってある
- 他の労働問題解決業務と扱いの大きさに差がある
- 「未払い残業代請求」の記載はあるが「未払い給料請求」の記載は無い
- 「未払い残業代請求」の記載と「借金の過払い金請求」の記載の両方の記載がある
- 「時効は2年です!」「今すぐ連絡してください!」等早期相談を促す記載が目立つ
- お問い合わせフォームへの案内がやけに多い
- 「未払い残業代無料診断チェッカー」等のシステムが設置されている
- HPがやけに小綺麗で今風である
- リスティング広告(例えばgoogleで検索すると検索結果の上下に出てきます、□の中に「広告」という表示があります)がされている
- 職員画像が腕組み・やけに斜めで自信満々そうに見せている
- 複数人の場合若手がほとんどである
- 「お客様の声」の記載が目立つ
くらいでしょうか。
さらに、このような事務所ではたっぷりと儲けていますので、SEO対策(インターネットでの検索で上位に表示されるようにする)もお金をかけて万全です。良心的な事務所ではそのようなお金はあまりかけられませんので、検索上位になることはなかなか難しいです。インターネットで相談・依頼先を探す際にはかなり奥までページを進んでみて、なるべく良心的な事務所を探してみてください。
上の表にあてはまるからといって、その事務所がすべて上記のような業務の取り組み方をしている事務所であるわけではありませんが、いろいろなサイトを見る時に少し気にしてみていただけるといいかもしれません。
ただ、このような感じで「がっつりビジネスとして割り切ってやっている」ところがあるということを心にとどめておいてください。
明日に向かって一歩踏み出してみましょう
私の気持ちとしては、もっとポジティブな前向きな内容で「こんなところこんな方がこんな理由でおすすめです!」と書きたかったのですが、そのような内容はすでにそれぞれのところで大いにアピールされてインターネット上にあふれていますし、どちらかというと情報の少ないネガティブで現実的なことのほうが、お客様にとっては有用なのではないかと思い、この労働相談の3,4,8では「あれもダメ、これもダメ」「あれには気を付けて、これも注意です」みたいな内容が多くなってしまいました。
品位が保てているのかなと思うような言葉・表現を使ってしまったような気もしますが、お客様へ実情をわかりやすくお伝えするために使用しました。
当事務所のHPだけ見たお客様は、もしかしたらどこに労働相談に向かっても労働問題が解決しなさそうな気になってしまうかもしれませんが、あちこちの他のHPも見に行ってみてください。どこのHPもしっかり解決できそうな感じで書いてあります。お客様の望む解決に向かって手伝ってくれるところはきっとあります。
動かなければ何も始まりませんし終わりません。一人で悩んでいてもどこかの誰かがいつの間にか解決してくれることはありません。あなたから動いてみることが労働問題の解決の最初の一歩です。
労働相談1から労働相談9まで読んでいただいたら、労働相談においてご自分の思いはだいたい相談相手に伝えることができるようになり、相談相手の言わんとしていることもだいたいわかると思いますので、ぜひお客様に合ったお客様が望まれる解決ができそうなところに労働相談に向かっていただきたいと思います。
泣き寝入りする必要もあきらめる必要もありません。勇気を出して明日に向かって一歩踏み出してみてください。あなたからの労働相談を待っている人がいます。
一人でも多くの方の労働問題が、望ましい解決になることを願ってやみません。